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CEOオーディションを軸に「社長」の潜在層を発掘していく
ーーこの度、これまで一般社団法人日本CEO協会・Team Energyが開催してきた「CEOオーディション」を新会社「CEO X」の事業に移管するとのことですが、まずは「CEO X」の設立背景について教えてください。
一つは、停滞している日本社会を変えていくためです。「新しい価値を創造したい」「課題を解決したい」といった個人の思いを事業活動に昇華する人が増えることは、間違いなく日本社会に良い影響を与えます。地域経済、あるいは日本経済の発展に寄与するだけでなく、次世代に価値を残すといった良い作用が数多く生まれ、「後継者不足」に対する打開策にもなります。
また個人単位で言うと、一つの会社で勤め上げることが当たり前ではなくなった「人生100年時代」のなかでは、自分の人生にオーナーシップを持って活動する必要があります。その最たる例が「社長」というキャリアであり、社長という働き方を誰もが選択肢の一つとして持てる状態にしたいという思いがあります。
ーー「CEOオーディション」を事業として推進することには、どのような狙いがあるのでしょうか。
自らの力で創業できる人は、自分で周囲を巻き込んでチャンスを掴むことができるわけですが、起業への思いを持っていても行動に移せない人は少なくありません。そういった潜在層にフォーカスを当てた事業活動にしたいと思っています。
その点でCEOオーディションは「ビジネスプラン不要、年齢・経験不問」という、従来のビジネスコンテストやピッチイベントとは一線を画す企画です。地域別・テーマ別と様々なカテゴリーで展開していくことで、潜在層の挑戦のきっかけにしてもらいたいと考えています。
実際、これまでもCEOオーディションの参加者からは「私のための企画だと思いました」といった声を多く頂いていて、ビジネスコンテストなどに興味はあるものの壁を感じている人は多いんですね。そういう人たちがオーナーシップを持ち、社長として会社を経営していくことが「一億総活躍社会」を実現する一番大事な要素だと思うんです。
ーーほかにも潜在層へのアプローチの方法は検討されていますか。
これまでのTeam Energyになかったアプローチとして打ち出していきたいのが、「CEOキャリア支援」です。CEOオーディションの合格者に限らず、社長を目指す方からの相談も広く受け付けようと考えています。「社長になるためにはどういう経験を積めばいいか」「目的や課題意識に対してどういう挑戦をしていくべきか」といったところを伴走しながらサポートしていきます。
僕自身が何者でもなかった人間であり、出会いを通して会社の創業に至れたと思っているので、こうしたキャリア支援の機会を得ることで変われる人は多いはずです。実は起業家でも、明確な課題意識を持っていたり、強烈な自己実現欲求を持っていたりするほうが稀有な例なんですよ。全体的に見ても、出会いや環境によって変わったという人が多いと思います。
ーー支援を得て行動に移すことで、変わることもあるわけですね。
経営者や起業経験者の体験談を聞くと、やはり経営を経験する前と後では、見える景色が全く違うと言います。情報収集や勉強をしているだけでは進まなくて、実践しながら目標を定めていく方が健全かなと思います。
あとは、仮に挑戦が失敗に終わって違う道へ進むことになったとしても、挑戦したプロセスを評価してくれる企業は増えてきていると思うんです。挑戦することに不安やデメリット、リスクを感じる人もいるけれども、実際は得られることの方が多いはずです。
「CEO X」は社長へのキャリア形成を一気通貫で支援する
ーー「CEO X」の集客やマネタイズについての構想を教えてください。
まず、CEOオーディション事業が「CEO X」の軸になります。これまでCEOオーディションは、2022年に第1回を開催し、2023年末から今年の4月まで宮崎県延岡市からの受託で「CEO AUDITION ~延岡の社長プロデュース~」を開催しました。さらに6月には、株式会社TBMさんと一般社団法人ベンチャー・企業支援機構さんとの共催で「CEOオーディション – NEXTユニコーン -」を開催しました。今後もいろんな地域や企業と取り組んでいきたいと考えています。
また、オーディションの企画力や推進体制を評価していただける機会も増えてきたので、今後はCEOオーディションにこだわらず、オーディション企画の伴走を事業として展開していきたいですね。従来の一握りの人間だけが合格・成功するという形式のオーディションではなくて、挑戦したことを称賛し、次なる一歩をどうするのか一緒に考えていく機会になればいいと思っています。
ーー次なる一歩を一緒に考えていくというのは「CEOキャリア支援」にもつながりますね。
そうですね。CEOオーディションをやっていると、オーディション参加者のなかでも「まだ現在の仕事は辞められない」「すぐに生活環境を変えるのは難しい」という人のほうが多いんです。そういった方々の次なるステップとして、社長になるためのキャリア支援を打ち出していきます。
例えば、社長としての経験を積むための転職を提案したり、フリーランスであれば実務的な業務マッチングを支援したり。付き人のようなかたちで経営者とのマッチングを図り、手取り足取り学ぶというのも選択肢のひとつだと思います。こうした実例が増えるほど、データベースが魅力的になっていきます。
ーー事業のひとつに挙げられている「CEOデータベース」ですね。
その通りです。まずは経験を積みたいと考える人と、人材を求める企業をマッチングするのが「CEOデータベース」です。データベース上の人材をスカウトする、CEO・CxO版※ のダイレクトリクルーティングサービスに発展させたいと構想しています。いろんな入口・出口を用意して、そこをキャッシュポイントにしていきたいですね。
CxO:「Chief(組織責任者)、x(業務・機能)、Officer(執行役)」の頭文字で構成される経営用語。企業のなかの業務責任者といった意味で用いられる。
目標は、CEOオーディション、CEOデータベース、キャリア支援を一気通貫に運営することです。また、CEOオーディションの魅力のひとつに、合格者同士とのつながりや、審査員・プロデューサー、スポンサー企業とのコネクションを得られることが挙げられますので、こうしたつながりをコミュニティとして機能させて、次なるチャンスに活かせるような環境作りも進めていきます。
ーーそれが「CEO版Jリーグ創出」という構想にもつながるわけですか。
Jリーグの発足は、プロのサッカー人口を増加させただけではありません。地域社会に根差したサッカーの教育過程が生まれ、今や全国どの地域にもサッカーをやっている子どもたちがいます。それと同時にサポーターも増えていき、社会的な応援も増えて、国際競争力のレベルアップに至りました。プレイヤーだけではなく、サッカー好きな人も含めて一気にサッカーの裾野が広がったわけです。
社長というキャリアにおいても、同様の環境を作っていきたいというのが「CEO版Jリーグ創出」の構想です。
ーー「CEO版Jリーグ創出」に向けて、どのような取り組みを推進されるのでしょうか。
ジュニアカテゴリーから社会教養的に起業や経営、お金に関して学んだり、自ら商売をしてみたりといった学びの機会を提供していきたいですね。第一線で活躍する経営者が子どもたちの教育に資する活動をするなど、世代を超えて交流できる社会環境の整備が「CEO X」として目指していく姿です。
エンタメ化せずにCEOオーディションのファンを増やしたい
ーー今後の「CEOオーディション」の方針として、「プロデューサーのチーム化」を掲げていますが、これはどういった内容なのでしょうか。
CEOオーディションでは、プロデューサーの方々の応援の姿勢や、参加者の可能性を引き出そうとする姿勢が何より大事だと思っています。CEOオーディションの趣旨に賛同していただき、参加者のキャリアや思いに寄り添いながらサポートしていただける方をプロデューサーとして引き立てていき、いずれはCEOオーディションの看板になっていただくのが理想です。
CEOオーディションのロールモデルはオーディション番組にあり、打ち明けてしまうと『Xファクター』や『アメリカズ・ゴット・タレント』なんですね。いずれもステージ上で審査員が○×をつけるんですが、次の選考段階では審査員がプロデューサーとなって、オーディエンスに評価を委ねるという仕組みです。これをCEOオーディションに置き換えると、やはりプロデューサーの存在はさらに大きくなっていきます。
ーー最後に、今後の「CEOオーディション」の展望についてお話いただけますか。
多くのオーディション企画が「リアリティーショー」としてエンタメ化することで人気を獲得していますが、こうした方向性はCEOオーディションに挑戦してくださる方や、賛同してくださる方には合わないと考えています。
ただ、エンタメ化しないと注目を浴びないジレンマがあり、現状でCEOオーディションの審査がクローズドな雰囲気になっているのも事実ですので、いろいろと試行錯誤していきたいところですね。参加型の審査で観客の方々に投票権を渡し、大人数の前でプレゼンをしてもらうようなイベントも検討しています。
CEOオーディションは「ビジネスプラン不要、年齢・経験不問」「人は誰でも社長になれる」というパッケージで、あまり制限はありません。だからこそ、様々な地域や企業に「CEOオーディション」のライセンスを使っていただき、「次はうちの地域で開催してほしい」と輪が広がっていくことが理想ですね。