目次
「何もない状態」を変えるために10代で起業
──天海さんは現在20歳で、Team Energyグループでも最年少の社長です。そもそも社長になろうと思ったきっかけはなんだったのでしょうか。
最初に起業をしたのは17歳のときなのですが、友人から「暇だから起業したいんだよね」と言われて、「なら、うちの父ちゃんがTeam Energyって事業をやってるから聞いてみようか」という話がきっかけです。大義もなくて、本当にくだらないですよね(笑)。
ただもちろん、社長になることは怖い選択という認識はありました。そこで一歩踏み出せたのは、何もない状態だったからです。当時は大阪から東京に引っ越した直後で、なかなか友達ができず、彼女もいないし、夢中になれるものもない。そんなときだったので「事業を起こす」という友人からの誘いはすごく魅力的でした。
──そのときはどのような事業を起こされたのでしょうか。
IoT事業を1年半ほどかけて色々やっていたんですが、売上の出し方どころか、社会の仕組みすら理解していませんでした。学ぶべき失敗がすごく多い経験だったと思います。
──起業のきっかけで父親の話が出ましたが、天海さんはTeam Energy創業者の中村代表の息子さんでもあります。やはり社長になったのは、父親の影響が大きいのでしょうか。
小さい頃から「ずっとゲームばかりしてんじゃねぇ。お前は社長になれ!」と言われ続けていたので、「このおっさん、ホンマうるさいわ。社長になんか絶対ならんで」と思ってたんですよ(笑)。
でも実際のところ、僕は人とのコミュニケーションが苦手ですし、指示された通りに行動できないところもあるので、今は個人事業主や社長という生き方が自分の落ち着く場所なのかなと思っています。20歳そこそこで決めるのは、早いかもしれませんが。
──現在は「株式会社Snow Dome」の社長としてキャットハウス事業を営まれているわけですが、やはりきっかけは天海さんが猫好きという理由なのでしょうか。
それは大きいですね。猫がちょっとでも楽しく暮らしてくれると考えたら、モチベーションがすごく上がるんです。
──天海さん自身も猫を飼われているのですか。
実は重度のアレルギーで、自分では猫を飼えないんですよ。
──事業の運営に差し支えはありませんか。
視察に行くと肌荒れなどの症状が出てしまうので、半日ほど寝込んでようやく治るみたいな生活を送った時期がありましたね。本当はキャットハウスの研究で自分でも猫を飼いたいのですが、そこは諦めていろいろな方からお話を伺っています。
猫と飼い主が住みやすい家を作るキャットハウス事業
──では改めて、現在の「株式会社Snow Dome」のキャットハウス事業について教えていただけますか。
古い民家を購入し、猫と飼い主さんが住みやすい形にリフォームしてから賃貸として出すという事業モデルになっています。
キャットハウス事業の特徴は、物件の専門性ですね。一般的な賃貸住宅のアピールポイントになるのは駅からの距離や築年数などだと思いますが、今は趣味や仕事に最適化された住宅が増えてきています。キャットハウスはそういった物件の一種で、猫とともに暮らすことに最適化された住宅となっています。
──キャットハウスには、具体的にどのような工夫が施されているのでしょうか。
工夫でいうと3つありまして、1つは猫の世話がしやすい環境作りですね。例えば、猫のトイレの置き場所です。人間のトイレとできるだけ近くにすることで、猫のうんちをトイレに流しやすくしています。
2つ目は、猫が楽しさや居心地の良さを感じられる環境です。猫のためにキャットタワーを置く方は多いですが、実は無造作に置いているだけだと飽きられてしまう場合があるんです。ですから、風通しの良い場所や景色が良い場所にキャットタワーを設置できるように設計しています。
3つ目は、猫だけに寄り添いすぎると人間にとってストレスの多い環境になってしまうので、飼い主さんにとっても快適な環境となるよう心がけています。例えば、猫の脱出防止扉と玄関のあいだにウォークインクローゼットを作ることで、洋服に猫の毛がつかないようにするといった工夫があります。
──最近はペットを飼っている方に向けた賃貸住宅も増えてきていると思いますが、どのような差別化を図っていますか。
地域的な独自性を狙っています。ペット可の物件は都市部にいくほど減っていく傾向にあり、そんななかでも東京だけはキャットハウスが増えています。その他の都市部ではまだキャットハウスを手掛ける業者はあまり多くないので、今は大阪を中心に事業を展開しています。
──東京以外の都市部では、需要に対して供給が間に合ってない。
コロナ禍をきっかけとして猫と暮らしたい人が急増したので、猫OKの物件の供給は間に合っていないと思いますね。とくに「価格帯が非常に高いか、物件の築年数が非常に古いか」という二極化が起きていて、中間層への供給が足りてないと思います。
多くの人に成長を応援してもらえるのは10代の強み
──17歳から起業を経験している天海さんから見て、10代で社長になるメリットを教えてください。
まだ20歳になったばかりなので、20代や30代との比較はできないですが、一番大きなメリットは人が話を聞いてくれるところだと思います。10代の人間が「お話を聞かせてください」と訪ねていくと、ほとんどの方が時間を割いて応対してくれるんですよ。
つい最近も施工会社さんとお話しているときに僕の無知がバレてしまい、心のなかで「どうしよう……カモられるかも」と身構えていたんです。けれどカモられるどころか、僕がわからないところを全て教えてくださったんですよ。現場にも誘っていただき、「こうすると、この部分にお金が掛かって、こうしたら安くできるんだよ」と、一から教えていただいて。
もちろん、中身がないと判断されれば人は離れていってしまうと思いますが、成長を応援していただけるのは、やっぱり10代ならではの強みだと思います。
──逆に、10代だからこそのデメリットは感じますか。
ビジネスマナーや仕事の進め方を学ぶ機会がないことは、大きなデメリットだと思います。
つい先日も「大事な会議やプレゼンのときは、資料をプリントアウトして持っていくと安心だよ」と教えていただいたんですが、僕のなかでは手元のパソコンで映すのが当然になっていたので、紙で持っていくという発想すらなかったんですね。そういった自分では思い至らないようなマナーや常識などを教えていただく度に、会社員を経験して、上司や先輩に指導していただく機会は大切だと感じます。
──ただ天海さんの場合、そういったところをTeam Energyで学んでいるわけですね。
そうですね。Team Energyでは「こうすればいいんですか」と尋ねれば、教えてくださる環境があります。
──20代に入ったばかりの天海さんですが、これからどういった社長になりたいですか。
綺麗事だとは思うんですが、人への優しさを忘れず、誰も傷つけずに物を作っていきたいです。周りから尊敬されたいとかではなく、誰に見られても恥ずかしくない、自分の行動に誇りを持てる人になりたいですね。
──最後に、「株式会社Snow Dome」の展望について教えてください。
「最近つまらないな」と思っている人でも「ここに来れば楽しい」と感じられる空間を作りたいと思っています。「Snow Dome」という社名はインテリアのスノードームが由来なのですが、スノードームは美しいものや尊いものをギュッと閉じ込めたものだと思うんですね。それを現実にも作り出すことが目標で、僕たちが提供するものを通じて、お客様にスノードームの中にいるような幸せを感じていただきたいです。