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2023年7月、元関西電力副社長の香川 次朗氏がTeam Energyの顧問に就任しました。
香川氏は関西電力副社長と関電不動産開発会長を歴任し、電力事業自由化や企業統合などに尽力した人物。そんな香川氏がなぜTeam Energyにジョインしたのでしょうか。
顧問就任の意気込みや、今後の展望について伺います。
プロフィール
香川 次朗
1976年に神戸大学経済学部を卒業し関西電力に入社。1995年に阪神・淡路大震災、2000年以降の電気事業自由化を経て、2009年から同社常務に就任。2011年からは副社長に昇進した。2018年に系列グループ会社の関電不動産開発に転籍し、2023年6月に会長を退任。
電気事業自由化の第一歩やブランドステートメントの立案に尽力
──まずは香川さんの今までやってきたことについて教えてください。
大きいプロジェクトとして携わったのが、家庭用のオール電化料金を作ったことです。2000年4月からの第一期自由化は、対象を大規模顧客に限定してスタート。いわゆる「部分自由化」です。家庭用の料金はまだ法的規制下にあり、許認可には届出が必要でした。もちろん、すべて電気でまかなう家庭向けの料金というものはなかったんです。IHのクッキングヒーターやエコキュートが普及し出していた頃だったため、2000年の部分自由化開始に合わせ新たな料金体系の「オール電化料金メニュー」というものを作りました。実はこれにすごく難儀したんです。
「オール電化料金メニュー」では、オール電化の家庭が使った電気と電気・ガス併用の家庭の電気が量的に同じだった場合でも、使用形態の違いを合理的にコスト評価。オール電化料金で契約している方が安くなるような料金です。これをお客様や規制当局が不平等を感じず、納得してもらえるよう説明しなければいけません。
当時は特別高圧電力の自由化が始まったばかり。ただ、段階的な家庭の電気事業の自由化は予定していました。家庭でも「ガスか電気か」という“エネルギーの選択”ができるようになる!という点を力説し、経済産業省にも掛け合って実施の了解を得ました。
最初は関電のみでのスタートとなりましたが、その年の下半期には他社でも一斉にオール電化料金が始まったほど、一気に広がりましたね。
また初めて電気料金にポイント制度をつくったのも関電です。オール電化のご家庭にだけポイントをつけるようにしました。これも大変で、経産省や公正取引委員会にも呼び出されて……「景品」という立ち位置にすることで乗り切りました。今ではどの会社でもやっているようなポイント制度ですが、最初は関西電力の中のたった数名でポイント制度の運営をしていたので、社内では白い目で見られたものです(笑)。
──その後、関電不動産開発に転籍されましたよね。
そうですね。関電不動産開発の会長として5年間在籍しました。関西電力の資産管理が中心の関電不動産と、当時はファンドが所有し不動産開発も行っていたMID都市開発が統合したんです。やっていることがかなり違うので、互いの培ってきた文化や仕事内容も違っていました。
そんな背景もあるなかで前任の社長が「関西でナンバーワンの不動産会社になる!」と掲げたんですね。そこで私は、他の会社との違いを明確にする「ブランディング」を真っ先に行うことにしました。「関電不動産開発とは?」という根本を探るために、部門横断で若手を集めて2年かけて制定したんです。企業理念や行動指針、ブランドステートメントを決めていきました。最近ではこのブランド作りに共鳴した学生が、就職試験を受けにきてくれるようになっています。
ブランディングを基盤に、独自のマンション(商品)の特徴を強化。その上でCMなどによる周知・発信を進めて行った結果、関西では2年連続マンション供給ナンバーワンになれました。現在はタイのバンコクやシアトルやサンフランシスコ、ロサンゼルスなどでも住宅マンション供給も実現。さらに住宅用のブランディングチームも作り、独自のゼロカーボンの住宅作りに取り組んでいます。
新しい景色を見るためにTeam Energyへジョイン
──Team Energy創業者の中村に会った時、どんな印象を持ちましたか?
今までエネルギー業界では会ったことのないタイプの人でしたね。
初めて会ったのは十数年前のこと。中村さんから「マンションへの電力一括供給を進めたい」という話を聞いたんです。僕ら電力会社からすると、殴り込みのようなもの。「マンションの1軒1軒からハンコをもらうのは大変でしょ?」と聞いたら「そこが得意です!」と返ってきて驚きましたね。
でも家庭用での自由化競争が始まるなか「マンションを一括契約にすれば、多くのお客様をまとめて契約できるスキームだ」と考え直しました。これも時代の要請なのかなと考え、新しい販売戦略として中村さんとのタッグで取り組む決断をしました。
──なぜTeam Energyに顧問として参加することにしたんでしょうか。
一緒に仕事をしてきたことや、中村さんと地熱発電のプロジェクトで関わっていたこともあり、関係は続いていました。以前からお誘いはあったのですが、二の足を踏んでいたんです。でも会社人を卒業するときに声をかけてくれたことや、スタートアップの若手を育てているという話を聞いて「それじゃあいっぺん、新しい景色を見てみようかな」という想いでジョインしました。
Team Energyに入って驚いたのが、スピード感。中村さんは「責任を取るからとにかくやってみよう」というタイプ。他の会社では「こんなことやって誰が責任取るんだ!」と怒られるようなことも、スピード感を持って取り組めるのが驚きましたね。まさに「見たことのない景色」を見せてもらっています。
大企業にはできないこともTeam Energyの横串の取り組みで打開できるのでは?
自分が大きな組織で得た、ある意味保守的なリスクマネジメントなどの観点は、これからTeam Energyが成長していくなかで必要になってくるものだと思います。私が企業で経験してきた知見がTeam Energyの成長の中で貢献できるのか。これは私の新しいチャレンジだと思い、Team Energyの次のステージに向けた体制強化に取り組んでいます。
──これだけさまざまな仕事に長年関わってきて、ちょっとゆっくりしたいみたいな考えも浮かびそうなところ、それでも電力に関して携わっていこうという決心をした理由はありますか?
私、貧乏性で(笑)。あまりじっとしているタイプではないんです。
中村さんが今取り組んでいる地熱発電や新しい電力ビジネスは、今カーボンニュートラルに向けてものすごく追い風が吹いている。この課題に対して、ベンチャーの視点を持ったTeam Energyが解決の鍵を握っている、うまく進んでいける余地があるんじゃないかな?と思っているんですね。
Team Energyはエネルギー領域だけではなく、不動産や地域創生、若手の育成などにも取り組んでいますが、これらはさまざまな人と連携が求められるものです。それをTeam Energyで一貫して取り組めるのであれば、間違いなく「強み」になります。Team Energyならではの強みを横串で取り組み、難題を突破する先導を取れる将来を描いています。
チームで取り組むからこそ難題にも立ち向かえる
スタートアップの強みを活かし、スピーディーに取り組めるTeam Energyの強み。
ここに香川氏のリスクマネジメントやガバナンスの強みが加われば、より大きな課題や難題にも立ち向かっていけるのではないでしょうか。
今までは大企業しか参入できなかったさまざまな事業にも、参画の余地が生まれつつある現在。各グループ会社の連携を活かした取り組みもTeam Energyの武器となっていきそうです。