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Team Energyグループ(以下、Team Energy)とMIRACREATION株式会社が立ち上げたジョイントベンチャー「MIRACRE AI株式会社(以下、MIRACRE AI)」。その中核をなすのが、人間とAIの共創による新たな組織資源「HAIR」という考え方です。
今回はMIRACRE AI株式会社代表取締役の前田裕美さんに、ジョイントベンチャー立ち上げの経緯や事業内容、目指す未来についてじっくりお話を伺いました。

「人とAIがともに働く組織」が当たり前になる未来を目指して
──まずは、「HAIR」という構想が生まれた背景について教えてください。
私はこの業界で20年以上、人事制度の構築や労務管理、エンゲージメント向上など、中小企業の「人」と「組織」に関する課題に取り組んできました。その中で感じていたのは、経営者や現場のマネージャーが、時間や情報、そして人手の制約の中で非常に多くの課題を抱えているということ。そうした状況を打開するために、AIの力を活かせないかと考えるようになったのが最初のきっかけです。
「AIで人の仕事が奪われる」という不安も根強くありますが、私たちが目指したいのは、AIが人間の創造性や働きがいを引き出す“共創のパートナー”として機能する社会。そのためには、従来の「Human Resource」という発想だけでは不十分で、「人とAIの融合体」としての新しい資源管理の概念が必要だと考えました。それが「HAIR(Human AI Resource)」です。
Team Energyとの出会いが構想を加速させた
──構想を事業化するうえで、Team Energyとの出会いがあったそうですね。
はい。EOという経営者団体でTeam Energyグループ代表の中村さんと出会ったのがきっかけでした。Team Energyには、AI教育や活用ノウハウ、そして何よりも「やると決めたら一気に動く」スピード感がある。HAIRという構想を、理念だけで終わらせず、実装していけるパートナーはここしかないと感じました。
HAIR構想を形にするうえで、Team Energyのような現場主義のパートナーは欠かせませんでした。理想論で終わらせず、実際に使える形に落とし込んでいくフェーズで、Team Energyの実行力とネットワークは非常に心強いものでした。
組織、人材、事業の三位一体で「HAIR化」を推進する

──HAIRは具体的にどのような事業として展開されているのでしょうか?
HAIRは大きく分けて3つの事業軸があります。人材開発、組織開発、そして事業開発です。人材開発では、AIリテラシーや生成AIの活用スキルを習得するための研修プログラムを提供しています。組織開発では、評価制度やチームビルディングなどを通じて、AIとの共創に最適化された組織文化の設計を行っています。事業開発では、AIを組み込んだSaaSやプロンプトツールの開発・提供を進めており、人とAIの協働を日常の業務の中に実装していく支援をしています。
──一企業の業務改善にとどまらない、社会全体の変革の芽を感じます。
まさにその通りです。HAIRの本質は“文化”のアップデートにあると思っています。AIが人間の代替ではなく、創造性や共感力と組み合わさって初めて「人間らしい仕事」ができる。だから私たちは、組織や人材の支援を通じて、社会にその文化を根づかせていきたいと考えています。
中小企業にこそ、HAIRが必要とされている
──HAIRの対象として、どのような企業を想定していますか?
私たちがまず届けたいのは、中小・中堅企業です。特に従業員数が1000人以下の企業では、人手不足の課題が深刻で、現場に余白がない。でも一方で、変化への柔軟性もあり、意思決定も速い。そうした企業に、AIという新しい視点と実践を届けることができれば、非常に大きな変革につながると確信しています。
実際、私たちが開催している経営者向けセミナーでも、反応は非常に良いです。「こういう考え方を待っていた」と言っていただけることも多く、今後は紹介や口コミを通じて、じわじわと広げていく予定です。
人とAIがともに育つ組織を、当たり前にしていく

──今後の展望や、HAIRを通じて実現したい未来について教えてください。
まずは、全国にHAIR人材が存在し、企業の中で“人とAIが共創する職場”が普通になっている状態をつくりたいですね。私たちはHAIR人材の育成、HAIR職場の設計、そしてHAIR文化の浸透という3つのミッションを掲げています。これを着実に実行していくことで、日本社会全体の働き方を変えていけると信じています。
これから大切なのは、AIを「効率化」だけの視点で捉えるのではなく、「人がもっと人らしく働けるように設計する」こと。その意味で、HAIRという構想は単なるサービスではなく、社会のOSを書き換えるような取り組みだと思っています。