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2024.07 22

インタビュー

「好きなことではなく必要なことをやり続けた結果」新たにグループインしたシンク株式会社代表・中澤慶一の独特なキャリア選択


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「好きなことではなく必要なことをやり続けた結果」新たにグループインしたシンク株式会社代表・中澤慶一の独特なキャリア選択

目次

50歳を過ぎても好きではないことばかりやっている

ーー中澤さんのキャリアは、一部上場企業のSIerでシステムエンジニアとしてスタートされたそうですね。この経験で、現在の経営者としてのお仕事に役立っている部分はありますか。

プログラムだけではなく、ハードやデータベース、通信について幅広く学べたところですかね。会社自体は二次下請けの仕事が中心だったのですが、私が在籍していた部署だけはクライアントと直接やりとりをする環境があったんです。ハードやデータベースの選定もそうですし、「通信プロトコルも自分たちで作っちゃおう」みたいな環境で。

また、その部署は古いプログラミング言語を使っていたので、それによってITに対する理解を深められたと思っています。初歩的な部分から全て自分で理解する必要がありました。現場から離れて20年ほど経ちますが、こうした経験のおかげで経営者として現役のITエンジニアと話をしていても困ることはありませんね。

ーーITの基礎を理解したことが、現在にも活きているわけですね。

やはり通信とデータベースまで理解していないと、システムの全体像は見えてこないんですよ。プログラムだけでは、処理の流れだけしか見えないので。また、クライアントと直接やりとりをすることで下流のプログラムだけではなく、上流の要求仕様などを含めてまるっと経験させてもらえたのはすごく大きいですね。

ーー大学では経済学を専攻されていたそうですが、なぜシステムエンジニアを目指されたのでしょうか。

実はもともと歴史や哲学、文学が好きな学生で、コンピューターは大嫌いだったんですよ。授業でもパソコンに触りたくなかったくらいで。だけど、就職活動のときに「必ずITの時代になるよな」と思って、システムエンジニアになったんです。

始めてみるとハマっちゃって、当時は会社の残業ランキングでも上位にいたんですけど全然苦ではなく、楽しかった。土日も趣味で開発をやっていました。

ーーその後、ご友人の誘いで店頭プロモーションを中心とした広告代理店に取締役として参画されたそうですね。

高校のときからの悪友の誘いで、今回Team Energyにグループインする話も、その友人には事前に相談していたんですよ。中村代表の話をしたら「なんか俺みたいな人だな」と言っていて。僕から見てもタイプは似てるかなと思いますね。

僕はまず状況を把握して、そこから目標に向かうためにどうするかと順番に物事を進めていくタイプですが、その友人や中村代表はまず目標とする姿があって、そこに向かって直線に進んでいき、ぶつかっては解決してを繰り返していくタイプだと思います。

ーーご自分と正反対のタイプのほうが相性が良いわけですか。

人付き合いもそうなんですが、自分では好きではないことをやる性分があるみたいなんです。経営者に良いイメージを持っていなかったのに、友人に誘われて経営者になって。オーナーなんて面倒くさいと思っていたのに、MBOで独立してオーナーになって。50歳を過ぎた今でも、ずっと好きではないことばかりやっているんです。

ーー就職活動や起業といったキャリア選択は、自分のやりたいことが原動力になることが多いと思いますが、中澤さんの場合は時代のニーズや誰かに頼られたことを大切にされているわけですね。

後付けでいろいろ考えているだけで、そのときは意識してないんですよ。やりたいことも特にないし、誰かに誘われたりしないと何もやらない怠けものなんです(笑)。

ーーご友人と事業を営まれていた期間はどのくらいだったのでしょうか。

4年半なので、意外と短いんです。最初の会社でシステムエンジニアをしていたのも4年半なので、2つ足しても10年弱ぐらいですかね。

ーーその10年弱で、ビジネスパーソンとしての基礎が培われたわけですね。

本当にそう思います。とくに、友人と会社をやっていたときより辛い経験はないですね。一番しんどかったし、一番身になったし、いま振り返ってみても一番大事な期間です。

流れで決まったMBOによる独立

▲当時の同僚との写真


ーーその後、会社を移られて、上場会社での執行役員、子会社の取締役、IT事業の立ち上げ、事業のM&Aと様々なご経験をされています。この期間に苦労されたことはありますか。

その会社は創業者とホールディングスの社長を含めて、みんな学生時代からの繋がりがあり、人間関係の密度がすごく濃い環境だったんですね。一方で僕の人間関係はドライなので、砂漠の民がいきなり熱帯雨林に連れてこられたみたいな感じで(笑)。環境の変化に適応するのがすごく大変でした。

ーーそれまでのご経歴とは異なる業務に携われたわけですが、その点は苦労されませんでしたか。

確かに、事業の売却や建て直しといった未経験の仕事ばかりではあったんですが、業務面で大変と思うことはあまりなかったですね。結局、やれることをやるしかないし、わからないことは聞くしかない。それはどのビジネスでも変わらないので。

ーー未経験の仕事の連続でも、周囲の人に頼ることで乗り越えてきたわけですね。

今の会社でもSEOとサイト解析、広告運用に関しては、アドバイスしていただける方がいて。お客様に良いサービスを提供したいと思ったときに、自分たちにノウハウがないことであれば、その道のプロに協力を仰ぐようにしています。自分よりも仕事ができる人とご一緒したほうが面白いですしね。

ーーそして、そのグループ会社からMBOによって独立されて現在に至るわけですが、独立のきっかけについて教えてください。

何回か人に話したこともあるんですが……これといったものがないんですよ。

ーーそんなことってあるんですか(笑)。

直接的なトリガーとしては、別の子会社にいた人が退職されたことです。個性的で面白いビジネスパーソンだったんですが、その人をそのまま辞めさせてしまうのはもったいないと思ったんですよ。

そんなタイミングで当時のボスと食事に行く機会があり、その退職する人の話題が挙がったときに「次は僕ですかね」と、ポロッと言ってしまったんです。ボスは尊敬する経営者で、特段不満があったわけでもない。先ほど言った通り、オーナーへの夢があったわけでもない。今でもなぜそんなことを言ったのかわからなくて。

ーーそこからMBOというかたちで落ち着いたわけですか。

そうですね。親会社としても顧客やメンバーを残して一人で出ていかれると困るから、双方にとってメリットがあるかたちを模索した結果、そうなりました。独立のような大事な話を流れで決めるって、どんだけ主体性がないんだと自分でも思っています(笑)。

自分は誰かの「やりたい」を形にする大工さんの役割

ーー改めて、シンク株式会社の事業内容について教えてください。

▲槍ヶ岳に登山した時の写真。Team Energy創業者の中村との出会いも経営者コミュニティで一緒に山登りに行ったことがきっかけだったそう。

Web制作会社で、事業の内容はシステム開発やSEO対策、広告運用、サーバー管理など様々ですね。「Web周りのサービス全部できますよ」と言う会社さんは多いですが、うちのように網羅的に一つのチームとしてサービスを提供できるところは少ないと自負しています。

うまくいく事例だと、最初に小さいお仕事からご依頼いただいて、既存の業者さんを全部リプレイスして、うちがまるっとお受けするということもありますね。

ーー今回、Team Energyにグループインした狙いについて教えてください。

最初の目的は、安定した取引ですね。受諾で事業を行なっていると、大口の顧客が抜けると困るというのが永遠の課題として付きまといますから。

あとは、ノウハウのパッケージングを進めたいという思いがあります。代表の私自身がトップコンサルを務めているのですが、この経験をパッケージングしたいと以前から考えていて。Team Energyのように新しい企業が次々と生まれてくる環境ではスピード勝負になるので、私たちが長く使えるようなパッケージングを作ればグループ内でも役に立つと思います。

パッケージングができれば外部にプロダクトとして提供できるので、受諾中心だった体質の改善に繋がるというのも狙いのひとつですね。

ーー今後はTeam Energy内でのグループ会社の支援がメインになってくるのでしょうか。

いいお話があれば、外部の仕事を受けてもいいと思っています。やはりすべての仕事がグループ内で完結してしまうと刺激がないですし、いろいろなお客様と仕事をして、課題を解決していくことでスタッフのスキルアップにもつながるので。

ーーTeam Energyは体制変更を行い、今後はAI事業に注力していきます。シンク株式会社もこの体制のなかで重要な役割を担うそうですね。

僕たちもちょうどAIシフトをかけたいと考えていたところで、うちのメンバーのスキルアップやサービスの強化にもつながるし、それこそ三方良しのお話でした。

ーーWeb制作もすべてAIが担う時代が来るのかもしれませんが、今後のWeb制作会社はどうなっていくのでしょうか。

AIが出力した物の良し悪しを判断する人が必要な以上、まだすべてを置き換えることはできないと思いますね。実際に運用をしていても、SEO対策やサイト解析を行いやすくするために必要な部分は、絶対的な型があるわけではないので。そこはやはり、上流の思考を持った人たちの判断に任せる必要があります。

ただ、これも古い人間の考え方で、良し悪しの判断すらも別のAIがチェックできるようになるのかもしれません。けれどそうなると、プログラムもブラックボックス化が進んでいってしまいます。AIのアウトプットの良し悪しを判断するのも、実際に手を動かしてきたからこそできることなので、便利になればなるほど判断をできる人がいなくなり、大事故が起きるのでは……という懸念はあります。

▲ハロウィンでお子さんと仮装したときの写真

ーー最後に、中澤さんが考える「事業の立ち上げ時に最も必要なこと」を教えてください。

一番大事なのはやはり気持ちですよね。もちろん、他にも大事なことはいっぱいあると思いますが、根幹に強い気持ちがないと勝ち上がれないと思います。

ーー中澤さん自身には「事業をやりたい」という原動力がなかったというお話でしたが、そこに気持ちを乗せることができたのはなぜなのでしょうか。

僕にその気持ちがない分、気持ちを持ったボスやパートナーの「やりたい」という事業を立ち上げてきました。僕自身は大工さんのイメージなんです。大工さんは自分から「お寺を建てるぞ」と仕事を始める職業ではないですよね。誰かの「こういう建物が必要」という依頼で、腕を振るうわけで。MBOのときも独立が先に決まり、職人魂で仕上げていったことで今に繋がっていると思います。

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