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「起業後5年のうちに失敗する確率は18.3%」。こんな数字を見聞きしたことはありませんか?
せっかく意志を持って起業するのだから、失敗をしたくないのは当然ですよね。
そこで今回は、多くの会社を支援してきた公認会計士の小長野 仁志さんにインタビュー。
実は、設立当初から支援する公認会計士は珍しいとのこと。通常の公認会計士の大多数は、試験に合格し監査法人に入社したところからキャリアがスタートします。つまり、いきなり上場会社の対応が標準となります。
しかし、小長野さんのキャリアは地場の税理士事務所でスタートしました。中小企業サポートにやりがいを感じ、立ち上げから上場まで全期間サポートできる会計事務所を作ろうと決意をして今に至ったそうです。
今回は、設立から上場、事業承継や相続まで幅広くサポートできる小長野さんに起業で成功するために必要な要素や、成功している社長の特徴を聞きました。
小長野公認会計士事務所
所長・小長野 仁志 氏
・2005年2月 税理士法人勤務
・2012年1月 監査法人勤務
・2015年9月 小長野公認会計士事務所開設
税理士試験を勉強していたが、クライアントが上場を目指すことで、公認会計士事務所へ移ってしまったことをきっかけに、税理士の資格の限界を感じ公認会計士へ転向。
2015年小長野公認会計士事務所を開設、主に中小企業の顧問として、創業支援や税務顧問から、監査業務、組織再編・上場支援まで幅広く活動。
資格に守られた先生商売ではなく、「経営者と同じ立場から物事を考える会計士」として、日々奮闘中。モットーは「こんなこと聞いてもいいのかな、を気軽に聞ける公認会計士」
スタートは「赤点でいい」!?
──まず、起業するときはどんな準備や手順が必要なのでしょうか?
起業する前には、「事業計画書の作成」「起業資金の準備」「登記などの手続き関係」の3つを行いましょう。
なかでも重点をおきたいのが事業計画書の作成です。
目安として、5年先くらいまでは作った方がいいとお伝えしています。1年目は事業を軌道に乗せるための準備期間で、ようやく2年目から本格的な稼働に入る企業が多いんです。
成長が始まるのは3年目くらいから。そこで事業を少しずつ拡大していき、ようやく4〜5年目で計画が実現してくるという方がほとんどです。
2〜3年くらいだと少し短すぎるので、向こう5年くらいは作っておきましょう。有名な企業では最初から100年後まで作っちゃう、なんてところもありますよ。
計画書で作ったほうがいいのがPL(Profit and Loss statement、損益計算書のこと)、BS(Balance Sheet、貸借対照表のこと)などですが、BSは難しくて追いきれなくなることもあります。なので損益は「いくら売り上げが上がるか」「どれくらい経費がかかるのか」を見込みで出すといいでしょう。
あとはキャッシュフロー。お金の動きを追わずに経営はできないので、キャッシュフローを作っておく必要はあります。
──どうやってお客様を獲得していくか、マーケティング部分も計画した方がいいですか?
計画はしておいた方がいいのですが、必ずその通りにはいきません。計画は “変化”をする前提で作るのがいいと思います。
計画やプロジェクトを立ち上げる方にお話ししているのは最初は「赤点でいい」ということ。
0から100にしようと思うと計画はできないし、プロジェクトは進まなくなってしまいます。でも「赤点でいい」と思うと作れるんです。
「20点でいいからスタートしよう」と思うと、足りない部分を改善して30点、40点になっていく。でも0のものをいきなり50点にするのは大変なんです。
1回赤点でいいからスタートしてみる。これが重要です。
登記などの手続きは依頼するのがベター
──手続きなども経営者自身で行った方が良いでしょうか。
手続きには大きく分けて以下のものがあります。
1.定款の作成および認証
2.法務局での登記
3.税務署への届出
4.社会保険に関する手続き
頼むとお金が出ていってしまうからと、ご自身で手続きを行う方もいるのですが、この経験が今後活きるかというとそうでもないので……(笑)。
内容も煩雑なので、司法書士などに代行してもらい、そのリソースを自分自身の会社のことに使う方がいいなと考えています。
──手続きを依頼するとどれくらいの費用がかかるのでしょうか。
「定款の作成および認証」「法務局での登記」の2つを行うために、だいたい30万円ほどかかります。「税務署への届出」は約3〜4万円、「社会保険に関する手続き」は従業員を雇わない場合は約3万円、雇う場合は追加で5万円程度かかります。
ちなみに司法書士は1・2、税理士は3に対応可能ですが、公認会計士の場合はすべて対応できるので、一度に頼みたい場合は公認会計士がいいですよ。
起業のリスクはスモールスタートで軽減
──起業するメリットやデメリットには、どんなものがあるでしょうか。
メリットは、
・やりたいことが自由にできる
・今より高い収入を得られる可能性がある
この二つが大きいと思います。
特にやりたいことを自由にできる点は、起業の一番のメリットです。
サラリーマンであっても、やりたい仕事には就くことができます。でも裁量が少ないという意味では、自由にできないんですよね。
また「責任を負う立場が経験できる」というのもメリットですよね。
デメリットというと、
・失敗するリスク
・収入が保証されない
・会社の信頼を一から築く必要がある
このようなものが挙げられます。
──規模によって責任やリスクの大きさも違ってきますよね。スモールビジネスを目指している方もいると思います。
最初に起業するなら、スモールスタートが鉄則です。ベースがないところからすべて自分でコントロールして、1から作っていくのは面白いと思います。
スモールスタートとは言っても、常に事業を大きくした時のことを考えるのが大事。この仕事を100件やったらどうだろう、従業員が100人いた場合はどうだろうと想定しておくことが成長につながります。
「起業仲間」との横のつながりが支えになることも!
──小長野さんが起業される時に、メンターの方はいましたか?
実はいないんです。色々な本を読んだり、かつて出会った人のお話を自分の中に落とし込みました。
わからないことが出てきたらその都度、本とネットを見ながら解決していましたね。
それ以外でいうと「TKC」という税理士・会計士の団体に加盟したのも大きいです。
同じ時期に起業した人とも出会えて、気軽に相談できる環境ができました。
──横のつながりは大事ですよね!
同じ時期に起業した仲間で交流できるのはいいですよ! TKCでは開業3年間の人たちが「ニューメンバー」と呼ばれて、集まる機会があったんです。
Team Energyも同じように、横のつながりができる良い環境ですよね。
ビジネスを加速させるための資金調達や資本金
──起業準備のなかでも「資金調達」の話がありましたが、資金や資本の提供を受けるメリットやデメリットを教えてください。
自分自身で利益を享受できる一番の方法は、自社の株をすべて持つ100%株主の状態でのスタートです。でもこれは組織づくりや「経営資源」と呼ばれる、人、モノ、お金、情報のすべてを一人で作っていくことになるので、かなりしんどいですよね。
外から資本を入れるメリットは、この大変さを軽減できること。
資本を入れてくれた方は、共同経営のように会社に入り込んで考えてくれるので、ビジネスを加速させてくれるという意味では有効です。
一人で起業したけれどなかなかスピード感が出ない方は、たとえば誰かに株を持ってもらう・共同経営をしてもらうなどの助けを入れると、ビジネスが加速する場合があります。
創業期の資金調達について検討していきたいのが、日本政策金融公庫からの借り入れです。
国をあげて「中小企業の立ち上げを支援しよう」という機関なので、これから起業する経営者に対して協力的なんです。
300万円くらいから借りられて、この金額があればかなりスタートが切りやすくなります。
また公庫での借入の場合、代表者保証が必要ないケースも多いです。そのため最悪、会社がなくなってしまったり社長個人が亡くなってしまったとしても、個人での返済の必要がないのです。
返済の必要がない資本金は「信用」に直結
──基本的なことですが、資本金はいくらくらい必要なんでしょうか?少ない場合にデメリットはありますか?
資本金は「信用」に通ずる部分です。そのため見た目の信用にこだわらないのであれば、1万円からでも問題ありません。
でも「1万円で作られた会社」と思われてしまうのは、信用が低くなりすぎるデメリットがあります。そのため最低100万円くらいは必要かなと思います。
──借入した資金と資本金の違いは何でしょうか?
金融機関から借りた資金は、借りたものなので返さなくてはいけません。その点、資本金は返さなくていいお金です。
よく「財務体質が健全・不健全」などと言われるのですが、会社の元手である資本金が多い会社は「財務体質が健全」と言えます。
──代表取締役はなるべく個人のキャッシュを増やして、会社に増資することが大事になってくるんですね。
会社を強くして信用を得る上では、そうですね。
たとえば100万円の資本金で借り入れを900万円している会社と、資本金が1000万で借り入れがゼロの会社だと、信用度が違いますよね。
──資本金が少ないけれど、口座残高がある、みたいな会社もありますよね。
それは口座の残高がどうして増えているのかにもよります。
めちゃくちゃ利益を生み出して儲かっているのか、めちゃくちゃ借りて残高があるのかだと、後者は脆弱ですよね。
だからこそ返さなくていい「資本金」の金額は、信用につながるんです。
お金が増える方法は経営者が出資、もしくは外部から出資を受けて増資するか、金融機関から借り入れをするか、利益を出すかの3つしかありません!
失敗する社長は変化に対応できない!
──5年で5人に1人の社長が失敗すると言われている中で、小長野さんもさまざまな社長を見てきたと思います。そんな中で感じた「失敗する社長」の特徴を教えてください。
一言でいうと、変化に対応しきれない人です。
例えばコロナなどもそうですよね。細かな変化は必ず起こります。
「やってみたらうまくいかなかった」「今まではうまくいっていたけれど、うまくいかなくなってしまった」などは、常に捉えて対応していかなくてはいけません。
──先ほど「変化することを念頭に置いてスタートするのが大事」とのお話は、まさにこのことですね。
そうなんです。
たとえば最初の計画にこだわって、変化できずに進んでしまうと経営は難しい。うまくいかなかった事実を認識して、変化するのが大事です。なので「変化はするものだ」と念頭に置いてスタートする方がいいと思います。
「行動力の有無」が会社の成功に直結
──変化に対応するためには、どんな心構えやスキルが必要だと思いますか?
重要なのが、行動することです。
情報を収集して実行する。テストしてみる。PDCAを回す。これが先ほども伝えた「赤点でいいからスタートしてみる」というポイントにも繋がっています。
変化のためなのに情報ばかりを集めている人をよく見かけます。でも集めているだけでは何も変わりません。
──ということは、成功する社長の条件として「行動する」も重要なんですね。
行動力・実行力があり変化に対応できることは、成功につながると思います。
また成功している社長さんは、学習意欲が高いですね。さまざまなアンテナを張って、すぐに自分の仕事に当てはめて考えられる。これも「変化」に繋がります。
あとは最低限のことではありますが、当然法令遵守することも大事です。
──変化に対応した上で起業のリスクを避けるとするなら、どんな方法があるのでしょうか。
そのビジネスや事業に詳しい人を巻き込むのがいいと思います。
たとえば税金のことや会計のことは、当然ながら公認会計士が詳しいから話を聞きますよね。同じように飲食のことについては飲食店を経営している方が強い。ビジネスにおいてその領域に詳しい人に聞いてみる、というのが一番の近道ではないでしょうか。
──味方としてその領域の人を引き入れてしまうのも一つの手ですよね。
そうですね。人脈や繋がりが大事です。
完全グループ会社の強みを活かせる
──Team Energyのような持株会社のグループ会社としての起業には、どんなメリットがあると思いますか。
起業で大事なのが、人、モノ、お金、情報の「経営資源」です。
Team Energyだと、これらが揃った状態で起業できるのが強みですよね。ビジネスを加速できる環境なのが素晴らしいと思います。
なんといっても、社長としての経験が積めるのが大きい!
私の知り合いで、いわゆる「雇われ社長」でスタートして、年間数億円の売り上げを築いている社長さんがいます。でも同じ人がもし100%株主で起業した場合、ここまでの利益や経験を得られたか、得られたとしても何年かかるかどうかはわかりません。
Team Energyでの起業の場合はリソースが揃っているので、大きな仕事にもすぐに取り組めて、その分たくさんの経験を積めると思います。
いい環境である反面、出資をしてくれる親会社との紐付けがあるため、いくら会社を大きくしても自分のものにはなりません。その点はデメリットといえるでしょう。
「いつか独立するぞ!」と思っている方は、一度Team Energyで社長を経験してみるといいかもしれません。
もしグループ会社の社長が性に合っていれば、そのまま社長を続けていけばいいですし、「自分の力でやってみたい」と思えば、その道を進めばいいんです。一度経験をすることで、会社経営のノウハウを受け取れますよね。
それを受け入れる気概のある会社が、Team Energyなんだと感じています。
まとめ
意外と知らない起業にまつわるお金のことや、成長する社長の特徴まで、さまざまな社長と向き合ってきたからこその知見をお話しいただきました。
Team Energyで社長に挑戦すると、100%グループ会社として会社設立となります。
社長に対しては、業績に応じて相応の役員報酬を設定し、第3者割当増資のタイミングなど場合によってはストックオプションの発行も検討しています。
100%グループ会社だからこそ、経営に必要な資源が揃っている状態から始められますし、社長として豊富な経験を積むことができます。
小長野さんもおっしゃるように、経営資源が揃っている環境で起業できるのがTeam Energyの強み。
経験もノウハウも得ながら成長できる環境で、社長にチャレンジしてみませんか?